エピペンとアナフィラキシーについて
2023.04.06
医療情報トピック
エピペン（EpiPen）とは？
エピペン（EpiPen）は、アナフィラキシーショック（重度のアレルギー反応）を起こした人々を救うための自己注射用の医薬品です。エピペンは、エピネフリン（アドレナリン）というホルモンを含んでおり、これは急激なアレルギー反応を抑え、症状を和らげることができます。
エピペンは、医師の処方箋が必要で、注射器として携帯できるように設計されています。緊急時には、自己注射器を使って脚などの筋肉に注射することで、急速にエピネフリンを体内に送り込むことができます。これにより、アナフィラキシーショックの症状を劇的に改善し、命を救うことができます。
エピペンは、アレルギー反応を起こす可能性がある人々、例えば昆虫刺され、食物アレルギー、薬物アレルギーなどの症状を持つ人々にとって非常に重要な医薬品です。ただし、自己注射用の医薬品であるため、正しい使用方法を理解し、緊急時に適切に使用することが重要です。また、エピペンは、使用期限が切れたり、不適切に保管されたりすると、有効性が低下する可能性があるため、注意が必要です。
◎アナフィラキシーとは
アナフィラキシーショック（anaphylactic shock）は、急激なアレルギー反応の一種で、全身の臓器や組織が影響を受ける症状を引き起こす重篤な状態です。アナフィラキシーショックは、アレルギー物質に対する過剰な反応によって引き起こされることがあります。
典型的なアナフィラキシーショックの症状には、顔面や舌の腫れ、喉の詰まり、呼吸困難、呼吸器不全、心臓停止、低血圧、意識障害などが含まれます。これらの症状が発生した場合は、直ちに救急医療を受ける必要があります。
◎アナフィラキシーの原因
アナフィラキシーの原因は、アレルゲンと呼ばれる物質に対する過剰な免疫反応が引き起こすことが多く、代表的なアレルゲンとしては、食品、薬物、昆虫の刺咬、花粉などが挙げられます。また、非アレルギー性の原因としては、運動、ストレス、感染症、冷却などが考えられます。アナフィラキシーは、初めて接触した物質に対しても、再び接触した際に発症することがあります。アナフィラキシーは突然発生することが多く、速やかな対応が求められるため、過去にアナフィラキシーを経験したことがある場合は、再発を防ぐためにも、医師の指示に従って治療を受けることが重要です。
日本でのアナフィラキシーによる年間死亡者数については、厚生労働省が公表しているデータがあります。厚生労働省によると、2019年のアナフィラキシーによる死亡者数は、87人でした。また、2018年は74人、2017年は67人となっています。これらの数字は、アナフィラキシーが生命に直結する重篤な症状であることを示しています。アナフィラキシーの早期発見と適切な対応が必要であり、アレルギーを持つ人々やその周囲の人々に対しての正しい知識や対処法の啓発が重要です。
◎登山とエピペン
登山中にアナフィラキシーショックが発生した場合、迅速な対応が必要です。登山中にアナフィラキシーショックが発生した場合、まずはエピペンを使用し、救急隊や医療機関に連絡し、できるだけ早く医療機関で治療を受ける必要があります。
登山においては、アレルギー反応を引き起こす可能性がある食品や薬品を持参することが多いため、エピペンを携帯することが推奨されています。また、登山を行う際には、自分のアレルギーについて正確な情報を持っておくことが重要です。登山中にアナフィラキシーショックが発生した場合、その原因を特定し、今後同様の症状を回避するために対策を講じる必要があります。
なお、エピペンの使用には、正しい使用方法を理解し、必要な訓練を受けることが重要です。また、エピペンは一度使用すると使い捨てになりますので、交換期限を過ぎたものや、使用済みのものは廃棄し、新しいエピペンを用意する必要があります。
◎エピペンの使い方
〈概略〉
◎アナフィラキシーの徴候や症状が現れた場合は、エピペン注射液0.3mgを太ももの前外側に速やかに注射してください。エピペン注射液0.15mgも同じ使い方が適用されます。ただし、お尻や腕には絶対に注射しないでください。もしも、誤った箇所にエピペンを使用してしまった場合は、直ちに最寄りの医療機関を受診してください。エピペンの使用方法については、取扱説明書をよく読み、医師や薬剤師などの専門家に相談することをお勧めします。
◎準備
まず、携帯用ケースのカバーキャップを指で押し開け、エピペンを取り出します。次に、オレンジ色のニードルカバーを下に向けて、エピペンの中央部分を片手でしっかりと握り、もう片方の手で青色の安全キャップを外し、ロックを解除します。
青色の安全キャップは、注射針が不用意に飛び出さないようにするため、取り外す前まで装着しておきます。使用時まで青色の安全キャップは取り外さないでください。また、安全キャップを外した後は、誤注射を防ぐため取り扱いに十分注意してください。
指や手などをオレンジ色のニードルカバーの先端に当てないように注意しましょう。使用する前に、注射器の窓から見える薬液が変色していないか、また沈殿物がないかを必ず確認してください。このような注意点に留意することで、安全かつ正確にエピペンを使用することができます。
◎注射
エピペンを使用する場合は、まず携帯用ケースのカバーキャップを指で押し開け、エピペンを取り出します。次に、エピペンの先端を太ももの前外側に垂直になるようにし、オレンジ色のニードルカバーの先端を「カチッ」と音がするまで強く押し続けます。この際、親指をエピペンの上下先端のどちらにもかけないように注意しましょう。
注射をしたら、太ももにエピペンを押し付けたまま数秒間待ちます。このとき、投与部位が動かないようにしっかり押さえてください。そして、エピペンを太ももから抜き取ります。注射を行う際には、太ももの前外側以外には絶対に注射しないでください。また、太ももにエピペンを振りおろして接種しないようにも注意してください。
なお、緊急の場合には、衣服の上からでも注射できますが、必ず太ももの前外側に注射するようにしましょう。そして、注射を行う前には必ず、注射器の窓から見える薬液が変色していないか、沈殿物がないかを確認しましょう。また、使用後は誤注射を防ぐために、取り扱いに十分注意してください。
◎確認
注射後、エピペンのニードルカバーが外れたかどうかを確認してください。ニードルカバーが外れている場合は、注射は完了しています（針はニードルカバー内にあります）。
以下に注意点を示します。
●エピペンの注射後、ニードルカバーが外れていることを確認してください。
●ニードルカバーが外れていない場合は、注射が完了していない可能性があるため、再度ステップ1〜3を繰り返して注射してください。
●注射後は、すぐに医師による診療を受けてください。
◎使用後
エピペンを使用後は、以下の手順で処理を行ってください。
1.オレンジ色のニードルカバー側から、携帯用ケースに戻します。
2.注射後は、オレンジ色のニードルカバーが伸びているため、携帯用ケースのフタは閉まりません。無理に押し込まないようにしてください。
3.注射後、薬液の大部分（約1.7mL）が注射器内に残っていますが、再度注射することはできません。
4.使用済みのエピペン注射器と青色の安全キャップを医療機関等にお渡しください。また、エピペン注射液を使用した旨を医師に報告してください。
◎使い終わったあとに
エピペンを使用したことを、直ちに医師に伝えましょう。
注射を受けた部位である太ももを医師に示し、エピペン使用前の症状、そして注射後の経過を詳しく説明してください。このような情報は、医師が適切な治療を行うために必要なものです。また、症状の改善が見られない場合や、注射後に新たな症状が現れた場合は、再度医師に相談してください。
